小樽の食文化を牽引する名門「かま栄」の現在地。パンロールから限定品まで、2026年の港町を彩る練り物の革新
小樽 かま 栄は、1905年(明治38年)の創業以来、120年以上にわたって港町・小樽の胃袋と伝統を支え続けてきた老舗かまぼこ店だ。冷たい海の恵みを巧みに昇華させる職人技は、単なる地方の名物に留まらず、いまや国内外の美食家を引き寄せる強力な磁場となっている。2026年の小樽は、観光需要の更なる質的変化の只中にあるが、この店が放つ熱気と香ばしい匂いは、時代の波を軽々と飛び越えて街角を包み込んでいる。
石造りの歴史的建造物が並ぶ運河エリアを少し外れた場所に位置する小樽 かま 栄の本店工場には、平日の午前中から地元客と海外からの旅行者が入り乱れ、出来立てを買い求める行列が途切れることがない。その視線の先にあるのは、揚げたてのかまぼこが放つ金色のアロマと、職人たちがガラスの向こうで繰り広げる流麗な手さばきだ。
時代を超えて愛される理由:明治創業の職人技と革新

かまぼこ作りにおいて、水と原料魚の鮮度は命と言っていい。かま栄がこだわり続けるのは、北海道産の高品質なすり身と、職人が長年の勘で微調整する塩加減・練り加減だ。機械化が進む現代においても、成形の要所や風味の決定には人の手が不可欠であり、その絶妙な匙加減が、噛んだ瞬間に弾ける独特の歯ごたえ——しなやかで力強いプリッとした食感——を生み出している。
時代の変化に伴い、健康志向や保存料無添加へのニーズが高まる中でも、味の根本を揺るがすことなく進化を重ねてきた。伝統を守ることは、決して変化を拒むことではない。この店が示してきた歴史は、まさに愚直なまでの品質追求と時代への柔軟な適応の軌跡そのものと言える。
名物「パンロール」中毒の正体:サクサク衣と濃厚すり身の衝撃

かま栄を語る上で絶対に外せない存在、それが昭和37年に先代社長が考案した「パンロール」だ。豚肉や玉ねぎを練り込んだすり身を、極薄の食パンで巻き上げてそのまま油で揚げるというスナック感覚の一品は、当時としては常識外れのアイデアだった。賞味期限が短く防腐剤を使わないため地方発送ができず、「現地でしか味わえない幻の味」としてもその名を全国に轟かせている。
カリッとしたパンの歯ごたえの直後、溢れ出す旨味たっぷりの肉汁とふんわりとしたすり身のコク。この食感のコントラストは、一度体験すると忘れられない。現在でも本店で毎日大量に揚げられるパンロールは、小樽市民にとっては幼少期からのソウルフードであり、訪れる旅行者にとっては「小樽体験」の象徴となっている。
ガラス越しに広がる職人世界!工場見学が魅了する2026年の体験型観光

本店に併設された工場見学通路は、単なる展示スペースではなく、臨場感あふれるライブステージだ。見学者通路のガラス越しには、白い作業服に身を包んだ職人たちが、巨大なすり身の塊を瞬時に美しい形へ整えていく一連の動作が広がる。無駄のない動き、息の合ったチームワークは、まさにエンターテインメントの領域に達している。
2026年現在の旅行者は、単に「物を買う」だけでなく「その背景にあるストーリーや手仕事のプロセスを直接五感で体験する」ことを強く求めている。かま栄の工場見学エリアは、そうした旅のデスティネーションとして圧倒的な満足度を提供しており、子供から大人まで食入るように作業を見つめる姿が日常の風景となっている。
新幹線延伸前夜、小樽の「食」が魅せる国際的ローカルの熱量
北海道新幹線の札幌延伸を見据え、小樽の街全体が新たな都市のあり方を模索する中、ローカルな食文化の担い手としての期待もかつてないほど高まっている。多言語対応の案内や、多様な食のバックグラウンドを持つ海外渡航客へのきめ細やかな情報発信など、店舗側の受け入れ体制も年々アップデートされている。
しかし、どれほど国際化が進もうとも、かま栄の軸足が地元・小樽の暮らしからブレることはない。朝の食卓に上る日常の板かまぼこから、夕飯のおかずになる揚げ物、祝儀用の細工かまぼこまで、地域社会の節目節目に寄り添い続けてきた根深い信頼関係こそが、世界中の人々をも惹きつける本物のローカルコンテンツとしての強みとなっている。
工場直営店限定の隠れ銘品と、地元民が教える究極のテイクアウト術
パンロールの影に隠れがちだが、直営店には通を唸らせる限定商品や季節の創作かまぼこがズラリと並ぶ。例えば、エビやホタテ、チーズをふんだんに巻き込んだ「マヨサンド」や、旬の道産野菜を練り込んだ月替わりの限定揚げは、常連客が欠かさずチェックする逸品だ。
地元っ子が実践する最も贅沢な楽しみ方は、工場直営のイートインコーナーで「揚げたてアツアツ」をその場で味わい、余市産のクラフトビールや冷えた緑茶で流し込むスタイルだ。また、持ち帰ったパンロールを自宅のオーブントースターで1〜2分表面が香ばしくなるまで温め直すことで、店の揚げたてに匹敵するサクサク感が蘇るというテクニックも知っておきたい。
伝統を次世代へつなぐ:持続可能な海産物と未来への挑戦
海洋環境の変化や水産資源の変動が世界的な課題となる中、水産加工業の未来を見据えた取り組みも着実に進められている。持続可能な漁獲によって得られた原料の選定や、製造工程におけるエネルギー効率の最適化、食品ロス削減に向けた徹底した生産管理など、老舗としての社会的責任を果たす姿勢は実に先進的だ。
120年を超える歳月の中で培われた職人の誇りと技術を守りつつ、時代の要求に応えて自らを更新し続けるかま栄。小樽運河の風に乗り、今日も芳ばしい香りを漂わせるその店構えは、単なる老舗かまぼこ屋の枠を超え、日本の伝統食文化が未来へ向かって力強く脈打つ姿そのものを体現している。 (出典: 小樽 かま 栄(Yahoo!ニュース))